イタリアのゴシック・ロック概説

主な動向

Nuova musica italiana cantata in italianoの時代

比較的どこの地域でもプログレッシブロックのメッカとされるイタリアに関しても、1980年を境に英語圏のポストパンクの影響が及びだした。そして、最初の世代が英語で歌っていたのに対し、次第に自国語の歌唱が行われるようになり、1984年以降『I.R.A. Records』が、「Nuova musica italiana cantata in italiano(イタリア語で歌うイタリアの新しい音楽)」としてプロモーションを始める(この辺は割とドイツに似ている)。

イタリアのポストパンクの事例として最初に見いだせるのが、GaznevadaやFaust’oらである。上記の通り彼ら時点ではまだ最新のイギリス音楽を自国でも行おうとした世代であり、ほとんど英語歌唱である。

Going Underground (Remastered)

しかし、一方でポルデノーネに1970年代末くらいからあるアンダーグラウンドシーンが勃興し、1981年には当該地域のバンドたちによるコンピレーションアルバム『The Great Complotto』がリリース。既にイタリア語歌唱が行われている等、後の伏線は張られていた。

そして、おそらくその最初の目立つ存在が、Underground Lifeが1983年にリリースしたアルバム『The Fox』とされている。

この後、このフィレンツェ地域でこの動向が特にみられ、Diaframma、Litfiba、Limbo、Neon、CCCP、Franti、Pankowといったバンドがこの地域から出ていく。また、これらの多くがゴシック・ロックのバンドに括られている。

Venus In Furs (Remastered 2015 - Excerpt)
CCCP – Fedeli Alla Linea - CCCP (Visual)
Gimme More (Much More)

この現象は、拠点として、1981年開業のクラブ『Tenax』、および『Contempo Records』、『I.R.A. Records』といったレコード会社がこの地域にあるためでもあり、この結果1984年になってこれらの楽曲を『I.R.A. Records』が「Nuova musica italiana cantata in italiano」としたわけである。

少し離れたシエナにもSymbiosiが登場した。

Symbiosi - SILENZIO - (1987)

ただし、ゴシック・ロックのバンドとして見ていくと、上記運動が目立つフィレンツェ地域以外にも点在している。

1980年代の目立ったところで言うと、トリノにはDeafear、ローマにはCarillon del DoloreやMarbre Noir、Il Giardino Violetto、モデルナにはThelema、ヴェネツィアにはDeath in Venice、サレルノではVoices、バーリにはThe Art of Waiting、ミラノにはThe Dead Relativesなどが現れた。

Il Giardino Violetto - Al cospetto del nulla 2019

また、ゴシック・ロックではなくダーク・ウェーブ畑に目を向けると、Kirlian Cameraがかなり目立っている。

Eclipse (Version 1988)

その後の動向

この後1990年代になるにつれて、「Nuova musica italiana cantata in italiano」は廃れていったというのが一般論である。ただし、ゴシック・ロックのバンドがいないわけではないのも同様である。

例えば、1990年代で目立ったところだと、Spiritual Bats、Lacrime di Cera、Ermeneuma、Holylore、Burning Gatesらがいる。

イタリアもまた1990年代末にはこれらの音楽がさらに衰えるが、今もまだ存在はする。

まず、Avant-Garde、Chants of Maldoror、Vidi Aquam、Bohémien、Human Disease、Le Vene di Lucretia、Echoes of Silenceらの名前が2000年代に細々と存在する。

The Moon Sang on the April Chair
Il trionfo di bacco e arianna
Ordo Equitum Solis - Our Lady of the Wild Flowers

2010年代以降のいわゆる第4波にも、例えばWinter Severity Indexなどの名前が挙げられる。

参考文献

ウェブサイト

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